「いいから黙って抱えられとけ」
またふわりと体が浮き上がる。
「……っ」
今度は黙って龍くんにしがみついた。
トクンと胸が高鳴る。
龍くんが優しい。あたしいまとっても幸せだ…。
なんだけれども…
「あ、あの…」
龍くんは一言も話そうとせず、耐えかねたあたしはそう切り出した。
「何か…怒ってたり、する…?」
優しくしてくれてるのになんだかそう感じてしまう。
「……」
龍くんは何も言わずに前を見て歩いている。
「ちょ、ちょっと何で無視すんのよ!」
くってかかろうとしたその時、
「龍様!結菜様をこちらへ!」
あのときのおじいさんが、車のドアを開けて待っていた。