「きゃあ…っ玄野くんが…!」 周りの女子がそれを見てざわつくが、気にする余裕もない。 「龍…くん?……ひゃっ…」 肩と膝の裏に手を回す、いわゆるお姫様だっこ。 軽っ… ちゃんと食ってんのか? それより…久々だ。 こんなに結菜の近くにいるのは。 結菜の甘い匂いがする。 香水ではない。シャンプーでもない。 結菜の、匂い。 騒がしいギャラリーは流し、俺は何も言わずに結菜を抱えて歩き始めた。