"夏は暑い"
当たり前の事だが、今年の夏は非常に暑い。
「あっつ〜い!!練習めんどくさいっ!」
私は東雲羽琉(しののめ はる)、桜丘高等学校の2年生。ごく普通のどこにでもいそうな女子高生。髪はショートで少しやんちゃな性格だ。
今は、秋に行われる体育祭に向けて、全校生徒グラウンドに出て、団に別れ練習をしている。
「羽琉、サボらない」
私が休んでいるところを見つけ注意しに来たのは、私の中学からの親友、桐沢凛(きりざわ りん)ちゃん!
「だってー、ダンス全然踊れないし、汗かいちゃうし、なりより日焼けするんだもんっ!!」
「文句言わないの」
「はーい」
私は渋々凛ちゃんの言う事を聞き、練習に参加することにした。

「はぁ〜、やっと休憩だぁ〜。ダンスってなんでこんなに難しいかな〜」
「そうかな?私は簡単だと思うけど?」
「凛ちゃんは運動神経がいいからそんなことが言えるんだよー」
そう、凛ちゃんは運動も勉強もできる完璧な人だ。そして、何より完璧なのがすごく整った顔立ちと綺麗でダークブラウンの色がとても似合う艶のいい髪。誰もが憧れるような抜群のスタイル。そう、凛ちゃんは完璧過ぎる人なのだ。もちろん、男子からモテまくりだ。私は生まれて初めて完璧な人に出会った。
「もう、凛ちゃんの全てが羨ましいよ」
練習の休憩中に他愛もない話をしていると、バックネット側で練習をしている団
から盛大な黄色い声が聞こえてきた。
「またか」
「本当モテモテだよね、隼人(はやと)くん」
呆れたように、凛ちゃんと話をしながら向こうの様子を眺めていると、ダンスの練習をしている鈴木隼人(すずき)の周りに女子が群がっていた。
「隼人くん、入学式の時から女子からの人気あるよね」
「そりゃ、あんなにルックスも良く性格も良ければモテるでしょ〜。昔からそうだったしねー。それに運動はだいの得意。運動神経の塊みたいな人だよ。」
「あー、確か羽琉は隼人くんと幼馴染みだっけ?」
「そーだよー」
そう、隼人は私の幼馴染み。家が隣で親同士も仲が良かったため、毎日のように遊んでいた。お互いの家も普通に出入りしているぐらいだ。隼人はとにかく芸能人に負けないぐらいルックスがよく、誰にでも優しく、マイペースでちょっと大人しめな性格のため女子からの注目がすごく高い。そんな隼人の隣にいた私は女子から痛いほどの視線を味わって来ている。たまに、呼び出されることもあり本当に大変だった。だからといって、隼人との関わりをやめる気はなかった。だって、私は隼人が好きだから。中学にあがり少したったぐらいの時から隼人のことを男として意識し始めていた。隼人は私の初恋の相手でもあった。