体をゆっくり起こすと、まだ少しだけクラクラした。


隣を見ると、心配そうな顔をした裕くんが居た。

「ここは…?」

「駅の事務所の隣の仮眠室。春華、貧血で倒れたんだ。佐々木は春華のお母さんに電話して、僕が付いてるって言って学校行ってもらった。でもすごい心配してた。春華のお母さんは仕事が昼休みになったら迎えにくるって。」

「そう……」

気まずい、沈黙が続く。

カチコチカチコチ


時計の音と

“間も無く3番線に電車が参ります”

ホームから聞こえるアナウンスだけが二人っきりの部屋に響いた。


時計を見ると時刻は10:30だった。
あ、学校、始まっちゃってる。


沈黙を先に破ったのは裕くんだった。


「……ごめん。駅歩いてたら、すぐ後ろで佐々木の悲鳴と春華を呼ぶ声がして。僕なんか居て、迷惑だよね。」


裕くんは目を伏せて、ポツリポツリと話し始めた。




「僕がさっき言ったこと、理不尽だった。春華の気持ち勝手に無視して……強く当たってごめん。」


それなのに……春華が倒れたの見て、凄く焦ったんだ。

最後の言葉は聞こえないような小さな声で付け足された。