裕くんにちょっとでも自分をよく見せようと嘘ついて、でも、陽を思い出すたびに罪悪感でいっぱいになって。

もう、嘘はつきたくない。


「ごめん…な…さい。」


陽の気持ち踏みにじってごめんなさい。

黙っててごめんなさい。


この想いをどうしたらいい?


私は…っ。


泣いちゃだめ。絶対、私は泣いちゃだめ。

そう思ってたのに鼻水をすすったときに、嗚咽が漏れた。


涙は出てないのに、胸の苦しい感じと、鼻水は止まってくれなくて。


私の鼻をすする音と、ときどき風でカサカサと木の葉と葉が擦れる音だけが、朝の静かな公園に響いた。



「…裕はいいやつだよ。」

不意に陽が口を開いた。

そう言った、陽の表情はわからない。
彼は遊具に手を置いて、私に背を向けていた。


「優しいやつだよ。自分に何かされても怒らない。でも、自分がどんなに不利になっても、大事なやつが傷ついたら助けるんだ。全力で、怒るんだ。」


あ……
うどん屋さんでの光景が蘇る。


彼氏である、裕を小馬鹿にした態度や言葉。


それには一切、怒らなかったと言えば、嘘かもしれない。


割り箸を割った彼の手は確かに震えてたから。

でも、特に何かする訳でもなくて。
ただ、うどん、食べてた。

でも、シャッターの音がして…
“私たち”の写真が撮られたとき、彼は確かに、私を守ってくれた。