「あの……さ。」

陽が遊具に寄りかかったまま、腕を組んで、目を閉じながら、口を開いた。


「うん。」

数秒、考えるようにして、陽は閉じていた目を開いた。

「裕が、土曜日、早く家出て……あいつ、最近ずっと時間ギリギリで、特に課外の土曜日なんか遅刻スレスレで。」



「うん……」


「なのに、その土曜日にすっごく、早く家出るから…玄関のサムターンが回った音聞いて、俺、泥棒かと思っちゃって。」


はは、と笑う陽。
目が笑ってない。

「だから、裕って知って、まぁ、安心したけど、びっくりしたわけ。」


「それで…」


汗が私の背中をつっとつたったのがわかった。

心臓が寒い。
罪悪感で、胸が潰れそう。


陽の頬につたったのは…汗ではなかった。




「うん、そう。そんで、あいつ、どこ行くんだろー、って思って窓から見てたら駅と違うほう歩いてくから、気になって。今日、裕が歩いてったほうに来てみたら…」