その日の授業なんて全く頭に入ってこなかった。
嘘でしょ、
私、もしかして逢坂と両思いなの!?
そんな期待で胸がいっぱいになる。
こんなに苦しくドキドキするのは
好きになってしまったとき以来かも、なんて
胸元のカーディガンをくしゃっと掴んだ。
――高校に入学した去年の春、
教室の初期配置の席順は出席番号。
『えだ』と『おうさか』は
ちょうど前と後ろ。
私は瑠維とクラスが離れてしまって
知り合いも居なかったこのクラスで
私に初めて話しかけてくれたのが
後ろの席の逢坂だった。
明るく気さく、
うるさいというわけではないけど
結構調子者な彼を
初めはありがたく思ってただけだけど、
段々からかわれるようになったり、
私も突っ込みを入れて、
それがクラスにウケたりして
私たちは今の会話のスタイルを定着させていった。
気兼ねなく話せるクラスメイトと思ったまま
秋になって、
高校生になって
初めての文化祭を迎えようと
少しずつ準備を始めていった私達クラス。
ずっと憧れてた高校の文化祭が楽しみで
出し物の製作も私は進んで取り組んだ。
そこまで切羽詰ってなかったうちのクラスは
居残って製作、装飾する人は少なく、
私は勝手に楽しみだからと
居残りで作業をしていたのに、
ある日急にやってきた逢坂に
『江田、えらいな、頑張って。
そういうところ、すごい、良いと思う』
なんていつもと全然違う、
優しい笑顔と声で
そんなことを言われちゃったその瞬間に、
私は逢坂の背後からさすあの夕日の様に
心が顔が燃えたような感覚を味わった。
そう、今思えば、
あれがまさしく恋に落ちてしまった瞬間ってワケ。