「ん?郁華も予備のチョコさばきで配ってるの?」

志津香にそう聞かれて、

「あ、ああー」

と言葉を濁してると

「本当だー!郁華も結構作ったねー!

まだ複数余ってるじゃんー」

と杏奈が私の持ってた紙袋をのぞく。


ひゃー!ひゃー!!


包装を個別にしなくて良かったー!!


なんてパニックになってると

「え、江田も余った奴くれんの?」

なんて逢坂も私に近づいてくる始末。


そういえばいつの間にか

瑠維はいなくなってて、

もう助けなんかない。


すぐ目の前に来た逢坂に

心臓の音が聞こえちゃうんじゃないか
と思いながらも

私はもうヤケになっていた。


「そ、そう!!

わ、私もさあ、作りすぎちゃって!

本当は昨日の夜自分で食べちゃおうかなーとか

思ったけど、

今日も散々もらえるのに
なにも前日にぼっちで
チョコ充することないってねっ!

だから、

ほらっ、あげる!!」


顔も見れずに逢坂に差し出したマフィン。

昨日、頑張って焼いて、

丁寧にラッピングした、
気持ちを込めたチョコマフィン。


「おおー、さんきゅな」

彼が受け取りそう答えると同時に

チャイムが鳴る。