「……逢、坂?」
状況がわけわからなくて
名前を呼ぶと
「鈍いし、いつも言動は可愛くねえし。
たまに素直になったと思ったら
こうやって泣くし」
そう言って私の頬を拭う。
「でも、そんなお前から
もし、
万が一、
本命チョコなんてもらってしまった暁には
本気で死ぬほど嬉しいくらいには
お前のこと好きだよ」
ふっと優しく笑う逢坂の表情が目の前にあった。
これは、夢?
まるで願ったりの展開に
私の気持ちも、
拍手喝采、万々歳!
……って!!
本当に拍手喝采になってる!?
廊下のど真ん中で
バカみたいなどたばたを繰り広げた私たちを
バレンタインデーで浮き足立った
同級生たちは放っておいてくれなかった。
「えっ!えぇー!」
パニックになった私の手を引いて、
逢坂は廊下を駆ける。
その途中瑠維の姿を見つけた。
嬉しそうににやけていて、
私は恥ずかしさのあまり顔を俯けた。
「こんくらい離れればいいか」
さっきまで居た校舎の廊下から
今は誰も入れない屋上への入り口前へ。