「……あ、あの、

受け取ってくれてありがとう!」


そんな目の前のやり取りに

呆気に取られて体が動かない。


やがて私の真横を満足そうな笑顔で

その女の子は通り過ぎた。


その子が去ったことを惜しむように

こっちを向いた逢坂が

私に気づいたらしく、

憎たらしい笑顔で近づいてきた。


「おやー江田さん、見ました?今の。

見ちゃいました?

『おしとやか』ってのはああいう子を言うんすよ。

俺の魅力に気づいてくれる子もいたもんだ!」


そう言って自慢げに

もらったチョコを私の目の前にちらつかせた。


「……しい?」

無意識に口から言葉が出た。

「へっ?なんて?」

聞き返した彼にもう一度問う。


「それ、もらって、嬉しい?」


私からの質問に

さも当然という顔で

「そりゃね」

と彼が答えたことによって

私は今

初めて、今朝の言葉の真意に気づいた。


『私から本命をもらっても嬉しくないだろう』

その言葉への真の返事はこうだったんだね。


『(確かに江田からのチョコなんて、

義理だろうが本命だろうが嬉しくないが)

(もし)好きな子から本命もらったら死ぬほど嬉しい』