――「郁華-ふみか-は今年のバレンタインどうするの?」
2月も10日ほどが過ぎた頃、
お弁当の時間にそんなことを聞かれた。
「あ、あぁー、そっかぁ……もうバレンタインなんだっけ!」
言葉をつかえながらも
「えっ、忘れてたのー!?」
「嘘でしょ!?女子力どこ行ったー!」
なんて笑う友人たちの姿越しに
教室の窓際に居て
クラスメイトと楽しそうに話してる“彼”を見つめる。
……さっきのおとぼけは全くの嘘で
バレンタインがもうすぐだなんて、
ずっと前から意識してた。
アイツに、逢坂-おうさか-に、
チョコあげたいな……。
なんて考えていると
逢坂と目が合ってしまった気がして
慌ててそらす。
「すっ、好きな人も居ないし、
バレンタインなんか友チョコ送りあって
色んなお菓子食べ放題からの、
デブ活三昧に決まってるじゃんー!!」
「うわぁ、郁華らしいー!!」
なんて、
全く思ってもないことを言うこの口を
どうにも出来ないまま、
2月14日がやってきた。