ー氷菜 side





春、最初のコンクール。





私は、教室から見える桜を描いたんだ、






楽しかった、その時は。






絵を描くのは昔から大好き。







勉強は苦手だけどね。






赤坂「氷菜、どう?」





琴野「んー…まぁまぁ…かな」





赤坂「そっか…」




そういう優香の絵は…。





琴野「ーッ」




正直、何も言葉が出ない。





それほどまでに、『吸い込まれる』。





赤坂「この後ろのところのぼやけ方…がさ




あんまり出来なかった…」





琴野「…そっか」





赤坂「…うん、時間あるしやっちゃうね」




そう言って、キャンパスに向き直る。





彼女の筆は、止まることがない。




ひたすらに何かを描き続ける。




それにくらべて、私はー…。




琴野「…ふぅ」






黒木「何がふぅ…だボケ」




その言葉と共に首筋が、



急激に冷たくなった。




琴野「!?何してんの!?」





黒木「俺の差し入れは、要らないと?」





琴野「嘘です、要ります」




黒木「だろ、てか!




圭介!!こっち来いよ!!」




コーヒーを渡すのと同時に叫ぶ徹。





その声の向けられた美術室の入口を、




見るとー




国影「ど、どなんなくてもいいよな!?」





黒木「黙れボケ!!」



国影「うぐっ」




若干…いや、かなり強制的に





引きづられてくる国影。





ー表面上はこんなにも、愉快なのに。






となりで、キャンパスに向かい続ける






優香を横目に見た。