私は洗面所を後にしたあと
いつものようにスーツに袖を通し
鏡の前に座る。
化粧水…乳液…美容液…

「女の子ってめんどくせぇ」

まただ。
彼は私が思った事を口に出す。
だからこそ会話が続かない。

「超能力者かよ…。」

彼に聞こえるか聞こえないかぐらいの
声でつぶやいた。

私は濃くも薄くもない化粧を終わらせ
仕事に出る支度をする。

「行ってきます。家を出るとき鍵はポストにいれててね。」

「へいへい俺はもう一眠りしてから家に帰るよ、ありがとう姉ちゃん助かった。」

そう、私と彼はなんの関係もないんだ
ただの姉弟。
血だって通ってる。

彼は昨日の晩、長年付き合ってた
彼女に振られたらしい
私の家にきてわざわざ
積もり積もった長年の思い出と愚痴を
私にこぼしにきたのだ。