ガラガラ...
扉が開くと待っていました!と言わんばかりに信代が振り返る。

「よくきたねぇ!
さぁ、料理が出来てるからたくさん食べてね」
夢子の目の前にはキンメの煮付けや暖かそうなお味噌汁にツヤツヤのご飯、野菜がたくさん入った煮物やお手製のお漬物など...
素朴でどれも美味しそうな料理だ。

「今日のオススメはこの金目の煮付けだよ!市場から取り寄せてるからきっとおいしいよ〜あと、この漬物だけはおばあちゃんが作って、おじいちゃんから唯一出してもいいって言ってもらえたから自慢だよ〜」

信代が一通り料理の説明をした。
いつもお客と接しているだけあって、とても上手だった。

しかし夢子は箸を持ったまま動かなかった。

「どうしたんだい?」
信代に声をかけられ、ハッとした夢子はおもむろに箸を動かし始めた。

何も言わずに食べ進める夢子に
「...口に合わないかい?」
と信代は不安そうに尋ねた。
和代の中にはいつも元気一杯で美味しい!と満点の笑顔で答えたいた夢子がいた。
その為か、今の夢子の状態がとても心配であった。

夢子は美味しいと答えようとしたが、急に吐き気に襲われ、慌てて口元を抑えた。

「夢子ちゃん!大丈夫かい?」

真っ青な顔をしてうずくまる夢子の背中を信代は必死に摩った。

「夢子ちゃん、具合が悪そうだから、明日は病院に行こう、途中で倒れたりなんかしたら心配だから、おばあちゃんも一緒に行くよ」

夢子は答える気力も無く、うずくまっていた。

「今日はもう寝よう、ちょっと待ってね」

「直哉くん!ちょっといいかい?」
信代一人で運べるはずもなく、信代は直哉に助けを求めた。

しかし、夢子としては、先程の冷たい態度が気になりとても心配だった。

そして、しばらくすると信代は直哉を連れてきた。

すると直哉は何も言わずに夢子をおぶった。

「直哉くんお願いね、夢子ちゃん、今日はゆっくり休むんだよ」

直哉は来た時と同じように大股で足早に家へと向かった。

青い小鳥を出て、先程夢子が寝ていた部屋へとたどり着いた。

すると直哉は夢子を下ろし、押入れを開いて、布団を敷き始めた。

「信代さんがここに寝ろって」

敷き終えると
「おれもう行くから」
と言い残し、去っていった。

夢子の嵐のような1日はこうして幕を閉じた。