彼女の名は夢子という。
彼女は昔から自分の名前の夢という字が好きだった。
母がいつまでも夢を持って希望に満ちた人生を送ってほしいと願って付けられた名である。

夢子は幼少期から、失敗が多くうっかりミスをしたり、後先考えずに発言して、誤解を生むことがあった。
そんな自分に自信が持てずに過ごした幼少時代から現在まで、唯一母親が付けてくれたこの名は好きだった。

でも、それすらももう嫌いになりそうだった。

夢ってなんなんだろう?

これから先の未来も見えず途方に暮れる夢子にとって、夢だの何だの言ってられない現実に直面していた。

つい1時間ほど前会社を辞めてしまった。
ずっと勤めていた会社だった。
うっかりミスや物忘れの多い夢子は、働いている職場に馴染めず、辞める事が度々あった。

現在、25歳。
つい先程まで働いていた会社には4年程勤めていた。
それでも夢子にとっては長い方であった。
その職場で、大きなミスをしていまい、上司から「貴女、大丈夫?」と言われたことがとてもショックだった。
まるで、頭がおかしいんじゃないかと言われているようで...。

それは夢子も気にしている部分であった。
上手く時間配分が出来ずに遅れてしまったり、逆に早く着きすぎたり。
何をしようとしていたのが、忘れてしまったり、私は普通に過ごせないのか?と常に悩んでいた。
親しい人からは天然で済まされることも、社会に出るとそうもいかないことが沢山あった。
気をつけようとメモをしたり、リストを作ったりしても、結局違うミスをしてしまい、どうすればいいのか自分でも分からなかった。

こんなことなら消えてしまいたい。
頭の片隅にふと過ぎった。