キィ…
とある倉庫の扉を開けると
沢山の男達がいる。
艶龍の溜まり場…少しモワッとする空気だ。
「幹部室に行こっか」
俊に案内されながら行く途中、下っ端たちが挨拶をしてくる。
「俊さん!お疲れ様です!!」
驚くほどみんなとっても礼儀正しい。
「頑張ってね」
そう、俊は言いながらずかずかと歩いていく。
ヒソヒソと私の事を言ってる奴もいる。
女々しい…
口にはださないが、思いっきり睨んでしまったらしく、下っ端達は怖がる。

「柚葉、ここだよ」
その部屋に入ると蓮と雅人が座って待ってた。
雅人は何度見てもやっぱりかっこいいと思う…
「やっときたか…」
雅人にため息をつかれた。
少しイラッとしたが、何とか理性で抑える。
「えっと…」
「あ!僕達のことは下の名前で呼べばいいよ♪」
蓮は軽々しく言う。
「わかりました」
しばらく沈黙が流れた後、雅人が話を切り出した。
「お前、その言葉使いなんとかならないのか?」
敬語の事だろう。
昔から何故か敬語になってしまう。
私の悪い癖なのか。
友達のいた事のない私には良く分からない。
「なりますよ」
「じゃ、敬語やめてね~僕達とはタメなんだから~」
蓮はやっぱり軽々しい。
「それと、表情」
俊が申し訳なさそうに言ってくる。

「表情はどうにもならない…」

「そうか…」
雅人はタバコを吸い始めた。

タバコ吸うんだ…意外…
少し真面目そうだから吸わないかと…

「そういや、俺たちの自己紹介ほとんどしてねぇな…」
雅人が思い出したように言ってくる。
「そうですね」
「蓮と俊は当然のごとく幹部だ」
当然のことを言ってきた。
「で、雅人が総長ね!」
蓮はニコニコしながら言っている。
「なんとなく、分かっていました。」
じゃなきゃ、ここにはいないだろうな
雅人がタバコを吸いながら
私の顔を見て
「柚葉、お前学校サボって親は何も言わねぇのか?」
そう言った。

ズキっー…

少し頭痛がする。
「何も…言わない…私の事なんてどうでもいいみたいだから。」
そう何も言わない。
「へぇ…そーなんだ…あ~柚葉下っ端君達に挨拶に行こっかぁ~」
「挨拶…」
「そう挨拶!僕も皆もついていくし、行こ~」
蓮はお願いのポーズをしながら私をてくる。
可愛いヤツ…

「わかった。」

幹部室を出て、しばらく歩くと
下っ端達がいる大部屋のような所に出る。
「注目!!!!!!!」
雅人が大声を出すと皆が振り向く。
「ほら、柚葉自己紹介して」
蓮に背中を押される。

押すな!!

そして、前に出されてしまった。
緊張するがそれを抑える。
いつも私は抑えてばっかだ。


「本堂 柚葉です。よろしく…」
なんて言っていいか良く分からないから
それだけ言って沈黙が流れる。
「プッ…」
雅人が思いっきり吹いた。
クスクスと笑う。
「笑わないでよ」
半ば切れ気味で言ってもずっと笑っている。
あ…
雅人の笑ったところ…初めて見た…
「皆…解…散…」
笑いを堪えながら雅人は言うので
言葉は途切れ途切れ。
あぁ…
幹部室に行ったらボロクソ言われる気がする。
俊も蓮も笑いを堪えているところを見ると絶対に。



「あはははははははっ!!!!!!!」
「なんだよ…あの挨拶っ…!お腹痛い…」
俊と蓮が大ウケしている。
「コミ障で悪かったね…」
拗ねてやろうか…
「もっとちゃんと他に言う事ないの?あははははははははは!!!!!!!」
連は笑いすぎ
あー!どうせ私はコミ障ですよ…!
「お前という人間がよく分かった気がする!」
俊が得意げに言ってきた。
「え…」
思いっきり嫌な顔をしてやった。
「ひどい!その顔ひどい!」
俊は私の顔を指さす。
「指をさすな俊」
そう言って俊の指を掴む。
「痛い痛い痛い!柚葉やめて!痛い!」
はぁ…そうため息を付いてから
指を離してやった。
「女って…みんなそんな生き物?」
指をさすりながら俊が聞いてくる。
「知らない…生まれて此の方、女友達なんていないから」
「友達いらないの?」
蓮に心配そうに尋ねられる。
「いらない」
前は欲しかった
恋バナしたり
ファッションについて語ったり
オソロのアクセサリー買ったり
とにかく、女らしい事がしたかった
それが今となってはそんな感情がない。
女としてまずいのか…
「柚葉はなんか女友達とか作らなそうな性格してもんね」
「どう言う意味かな?俊」
俊をいじるのはとても面白い
「なんでもないですっ!」
俊が頑張って自分で自分をフォローするのがまた面白い。
楽しい…
こいつらといると楽しい。
そう思った。