「そろそろ消灯時間ね、帰らないと。亜子ちゃん、千尋ちゃん、車だから一緒に帰りましょう」
お母さんがそう言うと、
「ありがとうございます!それじゃ先輩、帰りますね。
生チュー見られなかったのは残念だけど、絶滅危惧種の先輩の初恋成就を見届けることができたし……」
亜子はニヤリと黒い笑みを浮かべると、
「でも、楽しみが増えましたよ、先輩のノロケ話が聞けるようになるんですから。
さ、千尋、帰るよ」
そう言うと、すっかり千鶴さんと意気投合した千尋に声をかけた。
「早く元気になってくださいね、全国大会まであと少しなんですから。
恐らくこれが先輩と一緒に出られる最後の試合、最後のチャンスですよ」
最後……
亜子の言葉が重くのしかかる。
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