「痛かったら、走んなくていいんだかんな」
「…うん」
いや、走らないわけにはいかない
みんなに迷惑がかかるようなことはできない
「よーい、」
パァン_________
気づいたらリレーが始まって、一走者が走っていた
『1年生速いっ!
2位の3年生に大きな差をつけて走っています!』
と、アナウンスが聞こえた
すげー…
確かに3年生とはすごく差がある
このまま…!
『1年生、二走者にバトンタッチ!』
ヒロにバトンが渡された
『3年生も続けてバトンタッチ!』
3年生との差は3秒くらい
私はスタートラインに立つ
『おーっと、3年生1年生に追いついた!
あー!3年生1位になりました!』
嘘だろ?
ヒロが3年生に抜かされ、2位になっていた
でもその差はほんの少しで、抜けそうで抜けない、そんな感じだった
じょじょにヒロとの距離が狭くなっていく
_________3年生がバトンタッチをした
そしてそれに続くようにして入ってきたヒロ
「はい!」
私はヒロからバトンをもらい、走り出す
「…くっ……」
その途端に走る痛み
こんなの…どってことない!
私 は足が取れそうなくらい速く走り、少し前を走る3年生を追いかける
これ、抜ける……!
私はそのままグングンとスピードを上げて、3年生を抜いた
『おー!1年生の天野凛が、両足に怪我を負いながらも懸命の走り!
そして今3年生を抜きトップに立ちました!』
アナウンスのそんな声が聞こえた
よし…もう少し…!
すぐ後ろに3年生がいるのが分かった
ラストスパート_________‼︎
「凛!もう少しだ!頑張れ!」
前の方で優の声が聞こえる
もう、少しだ…!
私はありったけの力を振り絞り、足を動かした
「はい!」
優にバトンをわた________
「きゃあ!」
後ろで誰かの悲鳴が聞こえた
その途端、足に重みがかかり私の視界が揺れ、地面に叩きつけられる
やばい……転けた!
ズキ!っと襲ってくる痛み
恐らく、後で転けた3年生に巻き込まれたのだろう
また、かよ…
私は歯を食いしばりながら立ち上がり、優にバトンを渡す
「凛、よく頑張った。
あとは俺に任せとけ」
優はそう言うと、すでにバトンタッチして前を走る2年生を追いかけ
ものすごい速さで走っていった
フラッと足が揺れ、私はまた地面に叩きつけられる
足を見ると、白くて綺麗な包帯が、徐々に赤く染まっていくのが見えた
「きゃー!凛様!大丈夫!?」
「凛様ぁー!」
「凛ちゃん大丈夫かよ!」
大丈夫じゃ、ねぇよ……
ジンジンと足が痛む
転けた3年生も、膝を擦りむいているのが見えた
「救護係!天野さんと伊藤さんを保健室に!」
クソ教師が叫んだ
私は地面に倒れたまま人がごちゃごちゃと動くのをボーッと見つめる
「凛!」
たった今バトンタッチをした優が駆け寄ってくる
「凛!大丈夫かよ!?
無理すんなっつったのに…!」
「ごめ、ん…」
チームに迷惑かけたくなかったから
「っ、先生、俺が保健室に連れて行きます」
「あ、お、おぉ」
そう言うと、優はヒョイと私を持ち上げた
お姫様抱っこ、と言う形で
「優……」
だんだんと視界がぼやけていく
近くにある優の綺麗な顔がだんだんとぼやけていき、
ふと、見えなくなった
私は優の腕の中で気を失った