「あー、じゃ俺、もう戻るわ」
チラッと校庭を見る優
「うん…
練習、頑張れよ」
もう少し話してたかったな、なんて
何考えてんだ、私
「おう」
少しずつ小さくなっていく優の背中を見つめながら、私ははぁとまたため息をついた
ガラッ
外から、汚れを落とし終えたヒロと先生が帰ってきた
ヒロの怪我は、膝と肘を少しすりむいたくらいだった
「天野さん、もう少しだけ待っててくれる?
神崎くんに絆創膏貼っちゃうから」
「はい」
ヒロは「ごめんな」と眉を下げてこっちを見た
私は少しだけ微笑んだ
「よしっ、できた!
神崎くんは先に練習に戻りなさい」
「はい、ありがとうございました」
ペコっと頭を下げるヒロ
そして私に体を向け、「俺のせいで、ごめん」と言ってまた頭を下げた
「いや、いいのいいの。
こんなのもう慣れっこだし
ほら、練習終わっちゃうからもう戻りな?」
「ごめん」ともう一度つぶやき、ヒロは校庭へ戻っていった
「じゃ、お待たせ、天野さん。
まずは血を洗い流さなきゃいけないんだけど…
歩けないから水道には行けないわよね…
じゃ、タオル濡らしてくるわね」
せかせかと走り回る先生
私はそれをボーッと見つめていた
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね?」
「はい」
私の返事を聞いた先生は優しく傷の周りを拭き始めた
少し暖かいタオルが肌に当たるたびにズキっと傷が痛んだけど、頑張って耐えた
「あら…結構ひどい怪我ね…
これじゃ当分走れないわね」
『当分走れない』って、マジかよ
体育祭は1週間後に迫っている
「先生、体育祭までには走れるようになりますか?」
「うーん、どうだろう。
あとは天野さんの治癒能力の高さ次第ね」
私の治癒能力か…
昔から怪我ばっかりしてた私は、いつまでたっても傷の痛みが引かないことがおおかった
要するに私の治癒能力は低いということ
「それじゃ、ガーゼはるから足伸ばして?」
私はボーッとそんなことを考えながら足を伸ばす
血が落ちて、綺麗になった足は、皮が剥けていて痛々しかった
これじゃ体育祭に間に合うか分かんねぇな…
まぁ、痛くても走るのが私なんだけどな
「はい、足はこれで大丈夫よ」
足を見ると、両足とも包帯でぐるぐる巻きになっていた
「じゃ次は腕ね。
あら、腕は右側だけ見たいね」
怪我をしていたのは肘らへんから手首にかけて
膝みたいな感じで擦りむいていた
腕にも包帯が巻かれ、頬には、大きめの絆創膏が貼られた
「よし、これで終わり!
怪我が完全に治るまで安静にしてるのよ?」
「…はい」
安静に、か……
これじゃ当分走れないし、バスケもできない
マジ最悪…