じょじょに私とヒロの間の距離が詰まっていく
リレー経験者の私から見たら、もう見飽きた光景だった
……そろそろか
私はバッと走り出す
「はい!」
ヒロがそう言うのと同時に私は手を出す
バトンが私の手に触れる________
「おわっ」
しかしバトンは私の手に触れることなく、地面にカランカランという音を立てて転がった
その音が聞こえたと同時に 感じる痛みと衝撃
もしかして、転けた?
目を開けると頭が地面についていた
ヒロが転けたのに巻き込まれて、こけたのか
「…っ……」
立ち上がろうとしても体全体に痛みが走ってうまく立ち上がれない
「う…っ」
後ろで呻き声を上げて立ち上がるヒロの姿を目の端に捉えた
幸い、大した怪我はしていないようだ
「凛ちゃん!」
「天野さん!」
先生と生徒が、こちらに気づき駆け寄ってくる
「凛ちゃん、大丈夫!?」
そう言って私の上半身を抱えるようにして起こすのは、中学校が同じだった、C組の飯田 未羽 - Iida Miu -
「うっ……」
それと同時に走る痛み
「あっ、ごめっ」
「だい、じょぶ……」
私は未羽の肩を借りながら立ち上がる
膝を見てみたら、両膝から尋常じゃないほどの血が出ていた
「飯田さん、天野さんを保健室に連れて行ってもらってもいいですか?」
「あ、俺が行きます!」
誰かに支えながら立つヒロが言う
「いや、神崎もひどい怪我だ。
佐藤、神崎を保健室に連れて行ってくれ」
「はい」
佐藤と呼ばれた男子が返事をする
「じゃ、凛ちゃん行こっか
歩ける?」
「…なんとか……っ」
私に合わせてゆっくり進んでくれる未羽
一歩一歩歩くたびに走る痛みに耐えながら、私はようやく保健室にたどり着いた
「あら!どうしたの二人とも!
その怪我!とりあえず、そこの椅子に座ってちょうだい」
保健の先生に言われ、そっと椅子に座る
「未羽、ありがとな
私はもう大丈夫だから、練習戻って?」
「うん…分かった。
凛ちゃん、無理しないでね?」
心配そうに見つめる未羽に「ああ」と返すと、安心したように校庭へ走っていった