「好きだ、百瀬。」
座り込んだあたしの高さに合わせ、腰を屈めて言った加々尾くん。
相変わらずのイケメンで……目は気怠そうで、少し冷たそう。
もう一度唇が重なって、今度は加々尾くんから甘い香りがした。
チョコレートの香り。
それはきっとさっき、加々尾くんが食べてくれたあたしの手作りのガトーショコラだ。
唇の隙間から入り込んできた加々尾くんの舌が、ガトーショコラの味を教えてくれる。
結菜ちゃんの言う通り、あたしの作ったガトーショコラは相当苦いものとして出来上がった。
もちろん毒味済みだから、どれだけ苦いかも分かってる。
……なのに、加々尾くんとのキスで感じるガトーショコラの味は、毒味の時よりも甘く感じた。