目の前で起きてる事なのに、幻みたいに感じた。




『こいつが悪いんだよ……玲奈と俺の仲を壊そうとするから。自業自得だよ……玲奈に手を出した罰だ……』


亮くんはカッターを握りしめながら、ブツブツと呟いている。

カッターの刃先は、血が付いてる。



『う、そっ……』


『村田は俺らの仲を邪魔した。邪魔なんだよ……こいつは邪魔者……』


『嘘っ……こんなの、現実じゃない……』



亮くんが人を刺すなんて。
ありえない、絶対ありえない。


悪夢であってほしい。
こんな現実、受け入れたくない。



『いやあああああああああっ!!!!』


私は狂ったように叫んで、そのまま気を失った。