それから、庵は色んなところに連れて行ってくれた。
嫌だろうけど、ショッピングにも付き合ってくれて服を選んでくれた。
オシャレなお店でパスタを食べていっぱい笑って。
見たかった映画も見て、和樹さんのお店でパンケーキも食べた。
どれもこれも、幸せな時間。
庵といると笑顔になれる。
だけど、もう庵と過ごすことはできないんだ。
これは『最後の時間』だと思えば思うほどうまく笑えない。
言葉にできない想いが喉でつっかかって離れようとはしない。
自分で自分を苦しめる。もう嫌だ。
だけど、楽しまなきゃ。
せっかく新がセッティングしてくれた。
───彼のつらそうな顔を私は見たんだ。