「…なあ俺、ちゃんと話せてたか?」 「うん」 「…そうか」 足早に去って行く如月さんの背を見つめながら、桐生君は私の手をギュッと握る。 「…付き合わせて悪かったな」 「ううん、私が好きで着いてきただけから謝らないで」 「…サンキュ」 もう震えは止まっていた。 桐生君のなかで踏ん切りがついたのだと思う。憑き物がとれて、蟠っていた想いが溶けて消えたのだろう。 その証拠に、吹っ切れたような爽やかな笑顔を浮かべている。