「…日莉、今までありがとう」
「こちらこそ」
幼馴染みが離れる、それを分かっているのだ。桐生君も如月さんもそれを理解して、言葉を紡ぐ。
「…好きだった」
「私も蓮の事好きだったよ」
「…幼馴染みとして、だろ」
吹っ切れたように桐生君は笑って、私の手首を握り締める。辛いけど、堪えているのが手の震えから伝わってきた。
桐生君の手にソッと手を置いて、手首と差し替える。ゆっくりと握れば、桐生君がギュッと握り返してくれた。
目線は如月さんに向くなかでのちょっとしたやり取り。少しは桐生君が楽になれたら良いな。
「じゃあな、日莉。乙樹と幸せになれよ」
「蓮も、椎名さんと幸せになってね」
最後ににこりと笑い掛けられて、私は少し照れ臭くて、でも嬉しくて微笑んだ。如月さんは、私を認めてくれているのだ。