俺には幼馴染みがいる。

名前は日莉(ひまり)。

そして腐れ縁の芽生(めい)。

芽生の幼馴染みの乙樹(いつき)。

俺の周りにはいつも、この三人がいた。

高校の入学式である今日も、いつもと同じくコイツ等が傍にいる。



「芽生ちゃん何組だった?」

「僕はB組」

「まじ!?俺もB組!」

「じゃあ乙樹と芽生ちゃんは同じクラスなんだね!

ーーー蓮は?」



幼馴染みを意識し出したのはいつだったか。

幼稚園の頃からいつも傍にいて。
小学校の頃はよく喧嘩して。
中学校の頃からやけに可愛く見えて。



「蓮は日莉と一緒だぜ」

「え!本当!?やったぁ!」



いつからか日莉が“女”として見えた。



「でも乙樹と離れて寂しい」



だが、コイツの隣には既に乙樹がいた。

好きだと気付いたときはあまりにも遅すぎて「おめでとう」と柄にもなく笑うしかなかった。



「行くよ、蓮」



そして俺は今日もまた、幸せな二人の
背中を見ながら後ろを歩く。

憂鬱でしかなかった。
違う高校を選べば良かった。

乙樹が。
芽生が。
ーー日莉が。
無理やり、俺の願書を書き換えた。

お願いとせがむ日莉の腕を無理にでも振り払っておけば、こんなにも苦しまずにすんだのか。

約束なんてするんじゃなかった。
『ずっと一緒。』
なんて。





ーーードン!





ぼんやりしすぎてぶつかってしまった。

このときはまだ、気にも止めなかった綺麗な栗色の髪。おどおどする姿はまるで小動物のようで、脅える瞳は俺を映す。そしてこのときの彼女もまた、俺になんか眼中にないんだろう。



「ご、ごめんなさい!」



桜舞う高校一年の春。



「…ああ、悪い」



俺はまだ、叶わない恋をしていた。