俺はポケットから携帯電話を取り出した。

「何々?早速携帯チェック~ゥ?!」

勇磨が俺の携帯画面を覗き込んできた。

「なぁ~んだ。マナーモードに切り替えかぁ~。相変わらずネタのない奴ー。」

勇磨はそう言い、自分の携帯電話を取り出した。

今まで殺風景だった勇磨の携帯電話が何かをちらつかせている。

「お前何付けてんの?!」

よく見ると猫のキャラクター。

しかもハートの片割れを抱いている。

「はぁ…?お前…ついに少女趣味に走ったか…。」

俺は少し心配した表情で勇磨を眺める。

「違うわ!!これくらい悟れ!」

鈍感な俺にイラッとした表情で、勇磨は携帯画面を突きつけてきた。

そこには可愛い女の子と一緒に映った写メが映し出されていた。

「誰?」

「可愛いっしょ♪この前のテニスの試合で知り合った女の子。ずっとメールしてたんだけど、ようやくゲット出来ましたぁー!わぁ~!パチパチィー!って…あれ?」

勇磨の高いテンションに俺の思考回路は付いていけなかった。

えっ…?ってことは、何?

「彼女出来たってこと?」

「だから、そうだって!鈍感やなぁ~。」

勇磨は俺のテンションの低さに少しがっかりした様子だったが、一番のガッカリは俺だった。

大学に入ってからずっと二人でテニス一筋でがんばってきた。

彼女なんていらないって本気で思ってたのは俺だけで、いつの間にか勇磨に先を越されていた。