学校


山のような書類を抱えながら
廊下を歩いているはるか

その大量の資料を
誰かが横から持ち上げる

はるかが驚いて見上げると

潤平が立っていた

はるか『…望月くん』

にこっと笑う潤平

はるか『ありがとう、重いでしょ?』

潤平『全然余裕ですよ
   こういう時は声かけてくださいね』

はるか『うん、ありがとう』

潤平の言葉に笑って答えるはるか


先日の悠人のことがあってから
二人の距離が少し近くなったようだ



一緒に教室に入る二人

書類を教卓に置く潤平

潤平『これ何ですか?ずいぶん大量だけど』

はるか『あなた達の宿題』

潤平『え!』

驚く潤平の姿に笑うはるか

はるか『うそだよ』

潤平『なんだ~焦った~』


仲良さそうにふざけ合っている二人を
夏美がじっと見ている

――――――――――

授業後


駐輪場で自転車を出そうとしている潤平

そこへ
はるかが走ってやってくる

はるか『望月くん!』

はるかの声に気付き振り返る潤平


はるか『あの…』

周りに人がいないかを気にしながら
小さな声で話すはるか

そんなはるかに
潤平が耳を近付ける

はるか『あのね、お義父さんとお義母さんが
    望月くんにこの間のお礼をしたいって言ってて…

    あの…今度よかったら
     
    うちにご飯食べに来ない?』

潤平『…え?』

突然の誘いに驚く潤平


潤平『いいんですか?』

はるか『うん』

うつむきながら頷くはるか


はるか『実は…悠人も望月くんに
    すごく会いたがってて…』

潤平『悠人が?』

はるかの言葉を聞いて嬉しそうな潤平


潤平『じゃあ…
   先生の携帯番号教えてもらえますか?』

はるか『あ、うん…えっと…』

携帯の操作に手間取るはるか


潤平『貸して』

はるかの携帯を取り
手際よく操作する潤平


潤平『はい、俺の番号も入れといたんで
   また連絡ください』

そう言って携帯をはるかに返す


潤平『楽しみにしてます』

はるか『…うん』

微笑む二人


その時

他の生徒たちの話し声が
近づいてくる

慌てるはるか

そんなはるかを見て
潤平はわざと大きな声であいさつをする

潤平『じゃ、先生さようなら!』

そう言って、自転車で去る潤平


潤平の挨拶につられて
生徒たちもはるかに挨拶をする

『先生さよーならー』

はるか『さようなら』


はるかはドキドキしながら
携帯を握りしめ

生徒たちに挨拶を返す

――――――――――

夜 潤平の部屋


潤平がベッドの上で仰向けに寝ながら
参考書を読んでいる


その時

ピロン

携帯が鳴る

仰向けに寝転がったまま
携帯を見る潤平


『橘です
今週の日曜日は都合どうですか?』

はるかからのメッセージに
つい、やけてしまう潤平


その瞬間

バサッ

手に持っていた参考書を
顔の上に落としてしまう

潤平『…イッテ~』

顔を手で抑える潤平

――――――――――

橘家


寝室の鏡台の前で
髪を乾かすはるか

ピロリン

携帯が鳴る

手を止めて携帯を見る

『日曜日大丈夫です。楽しみにしてます。』

潤平からの返事に
嬉しそうに微笑むはるか

――――――――

望月鉄工所


潤平が仕事をしている

若菜『お!頑張ってるね~』

若菜の言葉に
手を止めて振り返る潤平


潤平『ねーちゃん 』

若菜『よ!元気だった?』

潤平『なに?また旦那とケンカしたの?』

若菜『失礼な!違うわよ!

   今年のお正月は旦那の実家で過ごすから
   その前に、私と瑠衣だけ帰省しにきたの~』

潤平『ふーん、瑠衣は?』

若菜『あそこ、お父さんといる』

若菜が指差した先には

休憩室で遊んでいる若菜の息子、瑠衣と
孫と楽しそうに話す克彦の姿

潤平『父さん
   本当、瑠衣にデレデレだね
   俺一緒に住んでるけどあんな父さんの顔見ないよ』

若菜『まーね、
   私と瑠依が帰る時、いつも泣きそうになってるの
   お父さんの方だもんね~』

潤平『そうそう!』

笑う潤平と若菜


潤平『姉ちゃん泊まってくの?』

若菜『うん、土日休みだからそのつもり

   日曜日にお父さん誘って瑠衣と出かけるけど
   潤平も行くでしょ?』


潤平『俺、日曜日はちょっと…』

若菜『え?なになにデート?彼女でも出来たの?』

潤平『…そんなんじゃないよ』

若菜『え~怪しい!言いなさいよ~』

潤平『だからそんなんじゃないって』


戸惑う潤平の脇腹をつっついて面白がる若菜

瑠衣『あ!潤平にいちゃーん!』

潤平に気付いた瑠衣が
休憩室から大きく手を振る

潤平も笑いながら手を振り返す

――――――――――

休憩室


克彦と若菜が
椅子に座ってコーヒーを飲んでいる

若菜の隣には
瑠衣が座っておもちゃで遊んでいる

若菜『ねーねーお父さん
   潤平…なんか変わった?』

克彦『そうか?』

若菜『うん、なんか
   前会った時より大人になった気がする』

克彦『うーん…そう か?』

若菜『なんとなくだけどね~
   ねー瑠衣、日曜日おじいちゃんとどこ行こっか?』

瑠衣『うーんとねー、動物園!』


若菜の言葉に
克彦は首をかしげながら

働いている潤平の姿を見る