教室


授業をしているはるかを
じっと見ている夏美

授業後

教室を出て
廊下を歩いているはるかを
背後から呼び止める夏美

夏美『先生!』

夏美の声に振り向くはるか


はるか『牧田さん、どうしたの?』

夏美『実は、先生にちょっと
   相談したいことがあって』

はるか『…相談?』

うなずく夏美


夏美『先生…帰りに少し時間いいですか?』

はるか『…帰りに?』

夏美の言葉に一瞬、戸惑うはるか

なぜなら

今日も仕事終わりのはるかを
潤平が校門の外で待っているからだ


夏美『先生、都合悪いですか?
   大事な話しなんで
   学校じゃ相談出来なくて…』

戸惑うはるかを見て
夏美が念を押して聞く

はるか『あ…ううん、大丈夫
     
    じゃあ、すぐ仕事終わらせるから
    待っててくれる?一緒に帰ろう』

夏美『はい!』

笑顔を作り
はるかに返事をする夏美

――――――――――

職員室


帰りが少し遅くなるかもしれないと
家に電話をするはるか

そして

今日は急用があって
一緒に帰れないことを

潤平にメールをする

――――――――――

帰り道


並んで歩くはるかと夏美

はるか『牧田さん、相談って…』

夏美『先生!ちょっと飲みに行きません?』

はるかの言葉を
かぶせるように言う夏美

はるか『…え?』

夏美『ここじゃちょっと話しずらいんで』

はるか『で…でも』

夏美『…嫌ですか?』


夏美の言葉に、困惑するはるか

そんなはるかを見てニヤリと笑う夏美

――――――――


夏美『先生、ここにしましょ』

そう言って
はるかの手を引っ張りながら
店に入る夏美

そこは
立ち飲みバーだった

店に入った夏美が
辺りを見渡す

その時

タクミ『お、牧田ー!こっちこっち!』

テーブルで飲んでいたタクミが声をかける

その声に驚き
タクミの方を振り向くはるか

そこには
洋介と潤平の後ろ姿


タクミ『あれ?…橘先生?』

その言葉に驚いて
振り向く潤平


夏美『さ、先生行こう』

はるか『牧田さん…これは一体どういうこと?』

夏美『まーまー、とりあえず
   あそこのテーブル行きましょ』

そう言って
牧田がはるかの背中を押す


テーブルでは

状況が掴めず戸惑っている潤平と
そんな潤平の様子に気付く洋介

そして
何も知らないタクミがいる

そんな中

夏美に連れてこられたはるかが
テーブルに着く

目を合わすはるかと潤平
そんな二人を見る夏美


タクミ『橘先生、ビールでいい?』

はるか『あ…う、うん』

タクミ『しかし、牧田が橘先生連れてくるとはね~
    びっくりしたわ』

夏美『でしょ?
   ちょっと橘先生に相談したいことがあって…』

タクミ『何の相談だよ?
    俺たちも相談乗ってやるよ』

笑いながら聞くタクミ

夏美『聞きたい?』

タクミ『勿体ぶんなって、気になるじゃん』


タクミの言葉に
クスッと意地悪そうに笑う夏美


夏美『先生が生徒をタブらかしてて困るって』


タクミ『は?』


その言葉に
みんな驚いて夏美を見る

みんなの視線をよそに
続ける夏美


夏美『橘先生と潤平くん

   昨日、駅の前で抱き合ってたよね?』


タクミ『は?は?』

タクミが口を開けたまま
はるかと潤平を交互に見る

何も言い返す事が出来ない潤平
うつむいたまま息を飲むはるか


夏美『てか、橘先生結婚して家族もいますよね?
   生徒と不倫なんかしていいんですか?』

タクミ『…不倫て…マジかよ潤平?』

潤平『…いや、それは違う
   俺が勝手に先生のことを…』


はるか『私が悪いの!』


潤平の言葉をかき消すように
はるかが口を開く

はるか『牧田さんの言う通りよ
    結婚して家族がいる身分なのに
    望月くんと…
 
    ごめんなさい』
 
そう言って
潤平に頭を下げるはるか

そんなはるかを見て
立ち尽くす潤平

はるか『牧田さん…みんなにも…
    不信感を持たせてしまって

    本当にごめんなさい』

そう言うと
夏美たちに深々と頭を下げるはるか

そして
その場を逃げるように

はるかが店を出る


潤平『…先生!』

はるかを追いかけて
店を出る潤平


タクミ『…な、なんだあれ

    俺、全然状況掴めてないんですけど…』


二人が出て行った店の扉を見て
ボー然とするタクミ

全てぶちまけてスッキリした夏美

ビールを一気に飲んで
店員を呼ぼうと手を上げる

その手を掴んで下におろす洋介

洋介『…お前
   橘先生に何か恨みでもあんの?』

夏美『別に…
   
   木元くんは驚いてないけど
   二人の関係知ってたんだね』

黙る洋介


夏美『旦那さんも子供もいる人が
   生徒と不倫してて
   
   木元くんは何とも思わないの?』


洋介『…いないよ』

夏美『え?』

洋介『先生の旦那さん
   
   …亡くなってていないんだよ』


洋介の言葉に、驚く夏美とタクミ

そんな二人を見て
洋介が静かに口を開く


洋介『…先生が初めて学校に来た日
   教頭が話してるのを偶然聞いたんだ』