橘家


悠人『ただいまー!』

悠人の声に玄関に来る義母

義母『あら、早かったのね』

びっくりしている義母

悠人『今日ねー乗り物いっぱい乗ったんだよー 』

義母に興奮して話す悠人


うんうんと聞きながら

様子のおかしいはるかの事が
気になる義母

――――――――




眠りについた悠人を見ているはるか

悠人の顔を見ながら
今日のことを思い出していた

ベッドに顔を埋めて泣いているはるかを

扉の隙間から、偶然見てしまう義母


義母は静かにその場を立ち去る

――――――――

望月家


玄関に入る潤平

女性物の靴と子供用の靴が
並んでいることに気付く

動物園に行っていた若菜と瑠依
そして克彦はすでに家に帰って来ているようだ

玄関近くの部屋で瑠衣が寝ている

リビングからは
克彦と若菜の話し声が聞こえるが

顔を出さずに二階へ向かおうとする潤平

そんな潤平に気付いて
リビングから顔を出す若菜

若菜『潤平、帰ったんなら声くらいかけなさいよね』

潤平『…うん』

元気のない潤平に気付く若菜


若菜『潤平…何かあった?』

潤平『別に…』


若菜に目も合わせず
そう言って、階段を上がる潤平

――――――――


ベッドの上で横になりながら
潤平が今日の事を思い出している


トントン

ガチャ

部屋の扉を叩いて、若菜が顔を出す


潤平『…返事する前に入ってくんなよ』

ベッドに横たわったまま言う潤平


若菜『ねぇ潤平、ちょっと出ない?』

その言葉に驚いて
潤平が顔を上げる

――――――――――

居酒屋


若菜と潤平が二人で飲んでいる


若菜『そっか…それでヘコんでたわけね

   しかし
   潤平が初めて恋愛話をしてくれたと思ったら…
   
   子持ちの教師なんて、あんたもやるわね~』


若菜が肘で潤平をつつく

潤平は若菜に全てを話したようだ


潤平『…からかうなよ』

ビールを一気に飲みほし
ジョッキをテーブルに置く潤平

若菜が追加のビールを頼む


潤平『ただ…先生に前を向いて欲しかったんだ』

若菜『きっと先生だって
   潤平に言われなくてもわかってるよ
   
   わかってるからこそ、辛いんだよ…』


潤平『やっぱり…
   旦那さんの存在って大きいよね』  

若菜『当たり前じゃない!

   ウチなんて顔合わせれば喧嘩ばっかりだけど
   …やっぱり旦那がいなくなったら
    私、きっと立ち直れない

   だって
   生涯一緒にいることを決めて
   結婚した相手だもん

   先生だってそうでしょ』      


潤平『…うん』

若菜『そんな、突然現れた23のガキが
   簡単に超えられるレベルの相手じゃないの』

潤平『…わかってるよ、そんなこと』


若菜の言葉に
ムスッとした顔で言う潤平


若菜『あんた、先生に
   待ってるって言ったんでしょ?』


潤平『…うん

   俺…欲張りだよね
   先生といられるだけでよかったのに

   どんどん欲張りになってく』

若菜『あははは…
   少年!それが恋ってものなのだよ!』

若菜が笑いながら潤平の背中をバシバシ叩く

潤平『…ねーちゃん
   絶対おもしろがってるでしょ』


若菜『だって
   潤平からそんな真面目な話し聞くなんて
   何かおかしくって

   あんた、昔はひどいもんだったんだから
   何人の女の子を泣かせたことか…

   まさか潤平が1人の人に
   そこまで真剣になるとはね~』


うるせーよ、という表情で
若菜を横目で見る潤平

若菜『ところで、その先生いくつなの?』

潤平『うーん…32歳だったかな』

若菜『げっっ!私より年上じゃん!』

潤平『げってなんだよ
   言っとくけど、見た目も中身も
   ねーちゃんより100倍キレイだからね』

若菜『はいはい!
   あ~あ、潤平のノロケ話聞いたら
   ウチの旦那に会いたくなっちゃった~』

潤平『あはは…なんだよ、それ』

――――――――

望月家 潤平の部屋


潤平が座ってメールを打っている


『先生、今日はごめん
ちゃんと会って話がしたい』


メールを送信するが

その日
返事は返って来なかった

――――――――

朝 望月家


寝起きの潤平が
あくびをしながら階段を下りる

玄関では若菜と瑠衣が靴を履いている
二人を見送る克彦


潤平『ねーちゃん、帰るの?』

潤平に気付く若菜

若菜『あ、潤平おはよう
   
   まーね、旦那一人で心配だし
   ちょっと早めに帰るわ
   
   あんたも頑張んなさいよ 』

若菜の言葉に潤平が頭をかく


二人の会話を
隣で不思議そうに聞いている克彦

手を振る若菜と瑠衣

玄関で見送る潤平と克彦


――――――――

教室


授業をしてるはるか

教科書を読みながら
生徒たちの席を回っている

潤平はそんなはるかの事を目で追う

未だにはるかから
メールの返事がないことが
気になっているようだ

はるかはそんな潤平とは目も合わさず
いつも通り授業を進めている

はるかの態度に気を落とす潤平


授業が終わり
タクミが潤平に声をかける

タクミ『潤平、飯食って帰ろーぜー』

潤平『うん』

席を立つ潤平


タクミ『先生さよーならー』

生徒たちと話をしていたはるかが
顔を上げる

はるか『さようなら』

手を振るタクミの後ろで

潤平は、はるかと目も合わさず
教室を出ていく


そんな潤平の様子が
気になるはるか