確かにあたしの名前は、ミスズだけど。
美静と書いてミスズと読むあたしの名前を、誰もが一発で呼べたことはない。
何でコイツ、ミスズって呼んだの!?
しかも、いきなり下の名前!!??
「珍しい漢字だから。覚えていただけ」
「……女の子の名前覚えるの、得意なんですか」
「そういうわけじゃねーけど」
條崎は否定するけど。
あたしは見たことない。
條崎が沢山いる女子の名前を、1度も間違えたことがないのを。
皆化粧が濃くて、皆派手だけど、條崎は間違えない。
そういう所を見ると、学年トップの成績は間違いじゃないのかなって思う。
「てかミスズ、敬語やめね?」
「じゃあそっちが、下の名前で呼ぶのやめてください」
「……逢坂って長いし?」
ドキッ。
整った顔立ちに浮かべる笑顔は、本当に駄目。
コイツ天然なわけ?
それとも、わざと?
…よくわからないけど、やっぱり苦手だ、コイツ。
「……どーでも良いけど。
早く決めないと、マズいんじゃない?ミスズ」
どうやら條崎は下の名前で呼ぶのをやめないようで。
あたしも敬語をやめないことにした。
てか、あたし條崎が苦手なんだ。
吸い込まれそうな茶色い瞳、よく通る声。
それにあの笑顔と来た。
條崎零と言う罠にはまってしまったら。
きっとあたしは、あの女子たちみたいになるから。
あたしは、絶対條崎に関わらない。
あたしは固く決心した。