家に入ると、

「菖蒲?帰ってたんなら入ってきなさいよ、暑いでしょ外は」


お母様とお父様が框に立っている。


「すみません。ただ、外の日差しは嫌いではありませんし…」


「メラニンが残ったらそばかすができるわ。スキンケアはきちんとホワイトニングのやつを使うのよ?」


もしお母様が話を最後まで聞いてくれる人だったら、菊乃姉様は出て行かなかったのだろうか。


そうしたら椿姉様も監禁なんてされなかったのか。


笑みを絶やさず人形の様にお母様の話を聞く。


今のお母様とお父様には私しかいないから。自ら突き放したのだとしても。


間宮家の膨大な資産を使えば、人2人くらい探すのなんてどうってことないはず。


それをしないのはまだ私という【砦】があるからだ。

「菖蒲?」


急にお父様が私の名を呼ぶ。

「はい?」

「何かあったのか?」

「いえ、少し疲れただけです。今日は練習でも調子が良かったので張り切ってしまいました」


「そうか、では早く休みなさい」



はい、と返事をして長い廊下を歩き自分の部屋へ入る。



ベッドに座り、ため息。


愛されて、いるのだろう。

だけど。