リックくんは途中まで言ったあと、広間中に響くように手を二回叩いた。
「さあ死体共!獲物は六匹。最も良い働きをした者には自由の権利を与えよう!!」
その声に呼応してゾンビたちは叫び声を上げ、一斉に襲いかかってきた。
「待って私こういうシチュエーション慣れてないんだけど?! 」
「ミライは下がってて! 」
ジュリーちゃんは私の前に背を向けて立ち、私を狙って飛びかかってきたゾンビに回し蹴りをお見舞いした。
蹴りはゾンビの右の脇腹にくい込んで、「ぎゃっ?! 」という悲鳴と共にゾンビは吹き飛び、
床に倒れ伏して動かなくなる。
おお……。
「大丈夫。みんな強いから心配することないわ」
そう言って長い髪を翻して私の方を振り返って微笑むジュリーちゃんがとても凛々しくて眩しい。
「ありがとう……ジュリーちゃんがイケメンすぎて惚れそうです」
「そ、それって褒めてくれてんの?!全然嬉しくなんかな――! 」
ジュリーちゃんが取り乱しながら言いかけた時、ちょうど別のゾンビが背後から鉄パイプを振り上げようとするのが見えた。
「……! ジュリーちゃん後ろ! 」
私の声と同時に、パン!という破裂音が響き、
今まさに武器を振り上げようとしていたゾンビが白目を剥き、仰向けに倒れたのだった。
音がした方を見ると、銃口から青い煙が立ちのぼる二丁の拳銃をこちらに向けているマリーちゃんの姿があった。
彼女は少し狂気を孕んだような、不敵な笑みを浮かべている。
「ミライちゃ~ん!すごいでしょ!惚れた?
惚れちゃった~?! ていうかジュリー!油断しちゃだめだよ~っ」
「助かったわ! もし殴られてたら頭蓋骨ごと粉々だったかもね」
ジュリーちゃんのことだから多少殴られても平気なんだろうけど、私を怖がらせないためだようか。
その近くでバットを振り回し、荒々しく素早い動きでゾンビたちを翻弄するミレアくんと、
黒い炎のような光を片手で操り敵を焼き尽くしては愉快そうな笑い声を上げるリルガくんの姿が見える。
皆すごいな。
誰一人として恐怖することなく――いや、
それどころか楽しんでさえいるようにも見える。
襲い来るゾンビたちを的確に戦闘不能にする四人の戦いぶりは、何だか見ていて清々しいものがある。
敵の数も確実に減っている。