再びあの壮絶な実験棟の廊下を走り抜け、玄関の大広間に着いた時、私たちは走るのをやめて目の前の光景に目を疑い、その場に立ち尽くした。
「……扉が消えてる?! 」
ミレアくんの言葉の通り、私たちが最初に入った入口があった場所はいつのまにかただの壁となっていた。
辺りを見渡しても、出られそうな場所は見当たらない。
「そんな……出口はここしか無かったのに……何で」
「ぶっ壊すか? 」
ジョニーの提案に、ジュリーちゃんは首を横に振った。
「この城の壁は実験体たちの脱走防止のために、かなり堅牢な造りになっているの。鬼のあんたが殴っても簡単には壊せないわ……それに、壊したらとても大きな音がするから」
「はあ?!じゃあどーすんだよ! 」
今それを考えてるのよ!とジュリーちゃんが
怒鳴る。
「……リルガくん、さっきここが実家だとか
言ってなかった?何か分からない? 」
私の問いかけに、リルガくんは さあ、と
首を傾げた。
「育ちの家ってのは本当だけど、出入口は
ここしかしらないな」
それは困ったな。
こうも為す術が無いと、マーモンが帰ってきてしまうのも時間の問題だ。
話を聞いた限りだと、あんまり関わり合いにならない方がいい相手らしいし。
「……なーお前ら。あんまのんびりしてらんねーみてえだぜ」
ある異変にいち早く気付いたジョニーが、
自分たちの背後に目をやった。
気が付くと私たちの周りにはいつからいたのか、私たちを取り囲むように臨戦態勢で身構える、ゾンビたちの群れがそこにはいた。
「うえっ……最初っからこうする気だったのかよ……」
こうも大量の死体に囲まれると吐き気がする、と呟き、ミレアくんはバットを構えた。
“最初から”という、ミレアくんは彼らから何らかの意図を察したようだったけど、本当にそうなのだろうか。
「不自然だなあ、このゾンビたち。さっきまで牢獄棟にいたのにどうやって出て来れたんだろうね」
リルガくんはそう言って、ゾンビたちの様子を伺いながら唇を歪めて笑う。
確かに。
このゾンビたちを私は知っている。
ジョニーを探している途中に通り過ぎたいくつもの牢屋の中にいた子供たちだ。
ただ、それ以上にゾンビは多かった。
一体何人がこのお城の中に閉じ込められていたんだろう。
「……彼らが誰かの命令でここにいるということは明らかよね。おおかた、初めは野放しにしておいて、下っ端が減ってきたところで一気に叩くつもりなのかしら」
「え~っ! それ考えた人すっごい性格悪いよね~! 私たちを絶望させる気満々じゃん! 」
ジュリーちゃんは面倒くさそうに伸びをし、
マリーちゃんはスカートの下から二丁の拳銃を取り出した。
「ハッ!こりゃ暴れるしかねーなあ!つーかその腹黒い命令した奴!近くにいるんなら出て来いよ!!」
ジョニーがそう言った時、ゾンビたちの群れの奥にある柱の陰から何者かが姿を現した。