……それはとても優しいキスだった。
といっても、これが初めてだから他のが
どういうものなのかは知らない。
優しい、というのが率直な感想だった。
私は何とかして離れようとするけれど
彼があんまり強く抱きしめてくるので、
大人しくされるがままになっていた。
嫌だ。
これはさすがにやめて欲しい。
とうとう耐えられなくなり、
私は彼の左頬に平手打ちを食らわし、無理矢理離れることができた。
「何すんのよ馬鹿!!本当に何してんの?!
俗に言うファーストキスだよ?!馬鹿なの?!」
ジョニーくん……いや、こんな奴くん付けで
読んでやる必要は無い。
ジョニーは、火照った自分の頬を押さえながら
目を見開いて私を見つめていた。
そして はっと我に返り。
「わ、悪い……!わざとじゃねーんだ!
お前がすげーミラクに似てたからつい……」
「つい?!そっくりさんならしてもいいってこと?!」
「そんなこと言ってねえだろ!!」
私たちは怒鳴り合い、お互いを睨みつけた。
相手は鬼だからやっぱり怒ると迫力がある。
「……お前、名前は?」
「……春花ミライ」
ジョニーはミライ?!と驚いたように私の名前を繰り返す。
「名前までそっくりじゃねえか!
このパクリ女!!」
「わ、私がパクったんじゃないよ馬鹿!」
「馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ!!さっさと出口まで案内しやがれ!!」
「うるさい!!言われなくてもしてやるよ
ばああああか!!!」
私とジョニーは互いに暴言をぶつけ合いながら牢屋の前を走り抜けていく。
途中でサキハラくんとフィンセントくんの姿を再び見つけたけど、私はジョニーを罵倒することで頭がいっぱいだったので、お礼を言うことが出来なかったのだった。
「今ジャパニーズガールが通ったネー!」
「えへへ、そうだね。なんか超ケンカしてたね」