「あ、そうだ」




この二人ならジョニーくんの居場所を
知ってるかもしれない。



「ねえ。最近ここに、鬼の男の子が連れて来られたりしなかった?」





サキハラくんは鬼?と首を傾げたあと、
考えるようなポーズをした。



「見たような気がする……確かこの階の、
一番奥の独房に閉じ込められてるはずだよ
……えへへ」


「本当?!ありがとう!」




私がお礼を言うと、サキハラくんは
少し恥ずかしそうに笑った。



「えへへっ……どういたしまして。
気を付けてね、ミライちゃん」



その横でフィンセントくんがグッドラック!と
親指を立てている姿が何だか微笑ましかった。


二人に手を振って、私はまた走り出した。






















「……ここかな」



私は重そうな鉄の扉の前で立ち止まった。

ジョニーくんが閉じ込められているという
独房は、他の牢屋とは違って、扉にある鉄格子のはめられた覗き窓からしか中の様子が分からない。


とりあえず扉をノックし、名前を呼んでみた。



「ジョニーくん……?」








しばらくの間 返事は無く、

ひたひたとこちらに歩いてくる足音が
鎖を引きずる音と共に、静かな通路に響いてきた。


足音は扉のすぐ前で止まった。







「誰だよ、お前」




扉の向こうから、少しハスキーがかった
男の子の声がした。



「えっと……私、今日から《学園》に入った
人間だけど。マリーちゃんたちと一緒に、
あなたを助けに来たんだよ」



「俺を助けに?」




扉の向こうの声は

明らかに私を疑っている。




「新手の拷問だろ。もう騙されねーぞ!!」




ガンッ

と、扉を強く蹴るような音がした。


鉄の扉は蹴っただけではさすがにびくともしないけど、音には驚いてしまった。




「嘘じゃないよ!マリーちゃんもジュリーちゃんも、リルガくんもミレアくんも、あと来てないけどツバサ先輩も。あなたを助けようと
《学園》を抜け出したんだよ」


「へえ、じゃあそいつらは今どこに
いるんだよ?!」


「建物には私しか入れなかったけど……みんな外で待ってる。私はあなたがイズミくんの
友達って聞いて、皆に付いて来たのよ」


「……イズミを知ってるのか」


「うん。悪魔たちに殺されそうになったのを
助けてくれたんだ。彼の指輪も、今ここにあるよ」





声の主はしばらく黙り込んだ後。




「……もしお前が持ってるっていう指輪が本物なら、ここの鍵を開けられるはずだ」


「便利!どうやって開けるの?」


「知るわけねーだろ!さっさと開けろ!!」





むかっ。


助けに来てあげたのに何で怒られなきゃいけないんだろう。


腹を立てながらも何となく指輪を付けた方の
手を扉の前にかざしてみると。

ガチャ、という音がして、鉄の扉がゆっくりと開き始めたのだった。




鎖を引きずる音と共に、牢屋の中から
声の主が姿を現した。