大人たちは言う。
夢を持てと。
だけど大人たちは
夢を持った私達に言う。
現実はそんなに甘くないよと。
まだ咲ききっていない桜の木の下で
別れを惜しみあっている
あの先輩たちも、
その"大人"に一歩 近付いたんだ。
私もこの先
やっぱり同じようになっていくのだろうか。
泣きながら抱き合う先輩たち。
色紙を貰って涙ぐむ先生。
先輩に写真を頼む同級生たち。
私、春花ミライ は少し離れたところから、
体育館の柱にもたれながら
一人でその光景を眺めていた。
「やっほーミライ!探したよ」
明るい声と共に、ほとんど体当たりするような形で私に抱きついてきたのは
同じ美術部だったリコ先輩。