だって今喋っただけで面倒くせえなって二回言ったし。
ツバサ先輩はまた だるそうに頭をかいたあと、私の方を見て言った。
「まあ、その……俺、一応寮長だから。
何か困ったことあったら言ってくれよ。気分が良かったら相談に乗ってやるから」
「大丈夫だよミライちゃん。先輩は気分が良かったらとか言ってるけど、何だかんだ言って
優しい人だからいつでも頼りになるよ」
横から口を挟んだマリーちゃんに、舌打ちするツバサ先輩。
「マリーお前はもう喋るな。話が進まねえし
いちいち突っ込むのも面倒くせえ」
「痛い痛い! また頭をわしゃわしゃしないで
くださいよっ! 」
何か、この二人のやり取り見てるの楽しいな。
ツバサ先輩は、挙止動作はヤンキーみたいだけどそんなに悪い人じゃなさそうだ。
「そういえば先輩はどうしてここに? 」
二人のやりとりを完全スルーしてジュリーちゃんが尋ねる。
「あ? ああ……今日、決行の日だろ。
城の見取り図借りてきた」
ツバサ先輩はそう言って、ジュリーちゃんに
一枚の古そうな紙を渡した。
「ありがとうございます……借りてきたって、
本当は盗んできた、が正しいんですよね」
少し微笑んでそれを受け取るジュリーちゃん。
マスクをしているから分からないけど、
先輩も笑っているようだった。
「あの……部外者が聞いて悪いんだけど、
決行の日って? 」
なんだか二人とも、これから悪いことをしようと計画を練っている犯罪者みたいだ。
二人の目つきが悪いからだろうか。
「ミライにはまだ言ってなかったわね。
話せば長くなるから今日、夜になったら
教室に来てちょうだい」
「教室? 」
三人とも、それ以上のことは教えてくれなかった。
というか私が参加してもいいことなのかな。
そうこうしているうちに夜が来て、寝る用意が整った私は部屋で髪を乾かしていた。
学生寮のお風呂があんな温泉みたいだとは思わなかった。
着替えはおばあちゃんの家で着ようと思ってた部屋着用のワンピースを今は着ている。
え、お風呂シーン?カットに決まってるでしょそんなもん。
マリーちゃんが襲ってきたこと以外は快適だった。
部屋も綺麗で、ベッドと勉強机が二つずつ
置かれているだけの簡素な部屋だけど、
石の外観からは想像もつかない植物の茎のような形の柱とか、カラフルな出窓なんかがとてもオシャレだ。
その窓から見える夜空がとても綺麗。
結局、今日中に帰るのは無理だったな。
おばあちゃんもきっと心配してる。
ユキちゃんにも早く会いたいし、
明日には帰る方法を見つけないとね。
「それじゃ、ミライちゃん。行こっか! 」
「うん」