「うう…… 」




そのとき、気を失っていた(?)はずの黄衣ちゃんが小さく唸り声をあげた。

いつまでもこんなところにいる場合じゃないな。私も早く行かないと。

この二人も、いつ目を覚ますか分からないからね……まあ目を覚ましたとしても動けるか
どうかは知らないけど。



イズミくんのあとを追ってお城を出たけど、
もう既に彼の姿はそこには無かった。


もらった指輪をポケットの中に入れて、駅を
目指して走り出す。



それにしてもイズミくんって、どこかで
会ったことあるような気がするんだけど……。
なんだか、懐かしい感じだ。

私の好みのイケメンだからだろうか。
え、違う?



そんなことを考えながら、さっき通った
メリーゴーランドやコーヒーカップの間を
走り抜け、ようやく駅にたどり着いた。

ベンチに座ってしばらく待っていると、
ホームに電車が煙を上げながら滑り込んできた。


電車というより、蒸気機関車だ。


中に乗り込むと、汽車はすぐに出発した。

車内に乗客は一人もいなかった。

私は沢山ある座席のうちの一つに腰を下ろし、
窓の外を眺めた。


その景色は私の知っているものではなく、
辺り一面に広大な砂漠が広がっていた。

魔法の国の駅を出ると、ピンクっぽく見えた空の色も今は普通に青空だ。

ただ、その青空には相変わらず大きな三日月が浮かんでいる。


流れる風景でも建物なんかは一切見えず、
砂漠は永遠に続いているようだった。

空を見ると、たまに変な鳥のような生き物の群れが飛んでいくのが見える。

私はケータイのカメラで何枚か写真に撮っておいた。

魔法の国でも撮っておけばよかったな。

帰ったらユキちゃんに見せよう。











『まもなく~《学園》前~』



そんなアナウンスが聞こえたのは、ちょうど
私がうとうとしてきた時のことだった。



「アナウンスは人間界といっしょなんだ?! 」



と反射的にツッコミを入れ、私は席を立った。


窓の外に目をやると、そこには《学園》と
思われる“町”があった。

何で“町”って書いたかというと、
砂漠の真ん中に沢山の古そうな建物が山のように積み重なっていて、ところどころの煙突から
煙が立ち上っていたから。

中には大きな歯車のようなのも見える。

それはどう見ても私が普段通ってるような
学校とは全然違うもので、想像ともかなり
掛け離れた光景だった。


何だろう、スチームパンクっていうジャンル
に近いのかもしれない。