｢……イズミくん?｣
私の言葉に
彼は頷いて、また何か書き始める。
『どうやって来たの』
｢電車に乗ってて……気付いたら、この
魔法の国の駅にいたんだ｣
その答えに
彼は更に文字を書き加える。
『早く帰った方がいい』
｢そんなこと言われても……帰り方
分かんないし……｣
私がそう言うと
イズミくんは物凄く嫌そうな顔をした。
｢……そ、そういえば、あなたも悪魔なの?
やっぱり人間は嫌い? ｣
サキハラたちゾンビも
黄衣ちゃんと翠くんのような悪魔も、
人間のことは
あまりよく思ってないようだった。
そんな私の問いに
イズミくんが答えたのは一言。
『嫌いだよ』
うん……。
ここの人達、
何で本人の前でこんなにはっきり嫌いとか
言えちゃうんだろう。
逆に尊敬するわ。
けど、それは悲しいな。
何でそんなに嫌われてるんだろう、人類。
何百年も前とかに
ご先祖様たちが何か怒らせるようなこと
したのかな。
だとしたらかなりねちっこいな。
そんなことを考えながら
一人でしょんぼりとしていた私は
イズミくんに肩を叩かれて振り向いた。
彼が手を指差すので何となく手を出すと、
イズミくんはその上に何かをのせた。
それはさっきまで
イズミくんが首からネックレスみたいに
鎖に通してぶら下げていた指輪だった。
銀のテンションリングで、
金属の部分には
桜吹雪の彫刻が施してある。
そして真ん中に埋め込んである赤い宝石が
太陽(?)の光を反射して、綺麗な輝きを
放っていた。
……あ、テンションリングっていうのはべつに
はめるとテンションがハイになるとか
そういうのじゃないよ、念のため言うけど。
｢これは?｣
『それを持って《学園》に向かえ』
イズミくんはその下にもう一行
文字を書き加える。
『そこに、お前に協力してくれる奴らが
いるはずだ』
《学園》……って、この世界、学校あるの?!
あの有名な魔法使いの映画みたいな
感じだったりするのだろうか。
それはちょっと行ってみたい気もするな。
私は
手の中の指輪を見つめた。
｢で、その《学園》ってどうやって行くの? ｣
と聞いてみたけどなぜかイズミくんは、
『俺は行かない』
というメモを見せて、
面倒くさそうな顔をした。
｢えっ何でそんな急に冷たくなるの?!
一人で行っても絶対怪しまれるフラグだよ?! ｣
そんな私の抗議を完全スルーして、
イズミくんは私の手を指差した。
『その指輪があるから大丈夫。
というか人間と一緒に歩くのは何となく
俺のプライドが許さない』
お、お前はなんて酷いことを……。
助けてくれた人――というか、その見た目じゃなかったら殴ってたよ?!
あなたのこと最初はもっと、こう、
優しい子かと思ってたよ!
何だよ!普通に悪魔じゃないか!!
あとイズミくん、だんだん筆談のペースが
上がってきたね?!
｢ふん。あんたの案内が無くとも、
《学園》くらい一人で行けますとも!!｣
私がそう言って膨れると
イズミくんは笑って、お城から出て行った。
