……って、あれ?



さっきから

長い間私の独白の文章が続いてるけど、
もうそろそろ刺されてる頃なんじゃ……

と、おそるおそる目を開けると。






翠くんは

短剣を振り下ろしていなかった――いや、



振り下ろせなかったんだ。


誰かが

翠くんの腕を掴んでるから。






「何してんの?邪魔するならきみから――」




言い終わらないうちに翠くんは

後ろにいる誰かに蹴りをお見舞いされたのか、
物凄い勢いで遠くまで吹き飛んだ。

そして彼は

そのままお城の壁に打ち付けられたのだった。





「翠――!!」




翠くんの後ろから現れたのは

一人の真っ白な髪をした男の子だった。




端正に整った

綺麗で中世的な顔立ちは

まるで球体関節の人形みたい。



しばらくの間見惚れてしまった。





そんな彼は表情ひとつ変えずに

桜色の二つの瞳で私をじっと見つめていた。




……な、なんか照れるな。

あと今日はイケメンによく会うな。




と、一人で照れていると。




男の子は今度は私の

血が出ている方の膝と指を交互に見たあと

無言のまま、地面に転がっているピストルを
指差した。





「え、使うの……? 」





私が彼に

ピストルを拾って渡した時に、

怪我が完治した黄衣ちゃんが剣を抜き
こちらに走ってくるのが見えた。





「てめえ!誰だか知らねえけど、翠を
蹴り飛ばしていいのは俺だけなんだよ!!」




そう言って

襲いかかってきた黄衣ちゃんに向けて
彼は何のためらいもなく、

ピストルの引き金を引いたのだった。