気持ち悪い音と共に
黄衣ちゃんの口から一筋の血が流れた。
「ぐ ぎ ゃあああああああああっ?!」
翠くんが短剣を背中から抜いたのと同時に
黄衣ちゃんは叫び声を上げて
痛みに苦しんで地面をのたうちまわった。
背中から噴き出した血は
みるみる彼の服を真っ赤に染めていく。
「痛い痛い痛い!!翠お前最悪!!ゲホッ、
死ぬ!これは死ぬやつだよー!!」
さっきまで綺麗だった黄衣ちゃんの顔は
血と汗にまみれて、とても見れたものじゃない。
私はピストルを下ろし
思わず顔を背けた。
「駄目だよちゃんと見て。悪魔だって
怪我をすれば血は出るし、痛いし、死ぬよ。この黄衣ちゃんを見た後も平然としてられる
余裕は、きみにはないだろう」
翠くんは
静かな声で話す。
「まあ、ナイフで刺されたくらいなら
すぐ治るけど」
いつのまにか
黄衣ちゃんの背中から噴き出していた血は
もう止まっていて、
そこから数本の触手のような物が伸びてきて
徐々に結び付き
やがて元の状態に治っていく。
「ううう……帰ったら翠の骨折ってやる」
私はその
グロテスク以外に何と表現したらいいのか
分からないこの光景に
不愉快な吐き気と
恐怖をおぼえた。
「いかれてる……!」
そんな私の様子を見て
翠くんはにやりと笑った。
「……今、トラウマができたね」