しばらくこのやりとりを聞いていて
思ったこと。


それは。





……この二人、もう一言も喋らないでおいて
ほしい!!




実に勿体無い。

このポジティブすぎてうざい黄衣ちゃんと

ネガティブすぎてうざい翠くんの第一印象は、


二人ともすごくお近付きになりたいくらい
イケメンだと思った。




けど今こうして会話をしてみると、
知り合っても絶対に仲良くなれない人たち
だった。





こんな人たちにかまってる場合じゃない。

今のうちに逃げよう。





と、こっそりその場を離れようとした。









―― そのとき。





ピシッ

という音と共に、私の片方の膝から
血が吹き出した。





「痛っ?!」




私はその場にうずくまり、膝を押さえる。

けれど痛みと共に、絶えず流れ出る血が止まる気配はない。





「ハッ!どうだ俺様の特技!触った相手の、
体に負った過去の傷を開く能力!!
すげえだろ!惚れただろ?!」




黄衣ちゃんはそう言って

私の前にしゃがんで綺麗な笑みを浮かべる。





「なあ翠!こいつ、どーせ殺すんだし、
存分に遊んでから殺そーぜ!」

「そうだね、でも気を付けて。この子
ピストル持ってるよ」





そうだ、ピストル持ってた。



私は痛みに耐え、リュックからピストルを
取り出して

黄衣ちゃんの額に銃口を向けた。





「馬鹿だな、悪魔に人間の武器は
効かねえよ!」



「それはどうかな。銀の銃弾って、
魔除けに効くって聞いたことあるけど?」





私の言葉に

黄衣ちゃんの表情は少しだけ
動揺の色をみせた。



それを見て

翠くんは深い溜め息をつく。





「べつに黄衣ちゃんを撃つのは止めないけど、そんなことしたらきみは人殺しだね」


「そ、そんなわけないじゃん!だってあなた
たちは悪魔だし……」




私の言葉に翠くんは鼻で笑い、

腰に挿していた短剣を抜いて
それを黄衣ちゃんの背中に振り下ろしたの
だった。