いよいよ自分の置かれている状況の重大さに
気付き、私はその場で頭を抱え込みたい気持ちになった。
電話も繋がらない。
駅には誰もいない。電車も来ない。
私はとんでもないところに来てしまった。
「どうしよう……このままだと
帰れないじゃん」
と、半分泣きながら しばらく途方に暮れていた。
……いやいや、ここで止まってたら
ユキちゃんに会えないじゃん。
駅の外に、お店とかバス停とかが
あるかもしれない。
そこで電車の時刻を聞いてみよう。
「……よし」
私は出かかっていた涙をぬぐい、
機能していない改札を飛び越えた。
駅を出たらトンネルがあって
それを抜けるとそこには
寂れた遊園地のような場所が広がっていた。
高くそびえる
水色の壁に色あせたピンクの屋根のお城を
中心に、
錆びたコーヒーカップや、
かつてはジェットコースターの道だったであろう鉄橋が
不気味に私を見下ろしていた。
奥の高台には観覧車が見える。
「こんなところに遊園地……?」
私は もう動きそうもないメリーゴーランドの
汚れた馬たちの間を抜けて
一つの広い道に出た。
錆やコケが付いてて動きそうもない
メリーゴーランド。
雨水の溜まったコーヒーカップ。
遺跡のような、観覧車。
そしてこの異常な静けさ。
まるで世界から取り残されたような。
寂しげで、どこか神秘的な。
……私の心の中ような場所だった。
やっぱり人がいる気配は無いな。
遊具ばかりで近くに建物は見当たらないし、
駄目もとで 真ん中のお城に行ってみようかな。
遊園地といっても
出入り口は今のところ、さっき入ってきた
駅しか無さそうだし。