……ところが
呼び出し音が鳴るだけで、おばあちゃんは
出てくれない。
何回かかけてみたけど、やっぱり出ない。
……仕方無いな。
駅の名前が分からないから時刻表も
見れないし。
駅員さんもいないようだ。
今 駅の名前が分からないって言ったけど、
ちゃんと文字は書いてあるんだ。
でも、その文字が読めない。
看板が汚れて、漢字か平仮名かすらも
判別出来ない状態になってるってこと。
他に人がいないかと周りを見たけど、
全然 人がいる気配はない。
まだ昼間だからそんなに暗くはないけど、
人がいないどころか
近くを車が走っている様子もない。
そして耳を澄ましてみてまた気付いた。
音が、無い。
休日の昼間なんだから誰かしら近くを
歩いてるはずだし、
風で木が揺れたり、
鳥が鳴いたりしたらそれが聞こえるはず
なのに、何も聞こえないんだ。
聞こえるのは自分の呼吸音と靴の足音だけ。
歩くのと息をするのをやめると、
本当に無音そのものだった。
静か過ぎてキーンという耳鳴りまで
聞こえてきて、私はだんだん怖くなってきた。
ケータイの画面に表示されてる時刻は
まだ昼なのに、
空の色はいつの間にか青空ではなく
濃いピンクのような赤のような、
何とも不気味な色に変わっていた。
そしてその不気味な空の真ん中に
大きな三日月が浮かんでいる。
よく見ると
空の星のように見えるキラキラしたものは
全て宝石のようだった。