―ねえ、私を慧の彼女にして!そうすれば誰にも文句は言われない

俺が高校に入学した頃から繰り返し言われる様になった。


そんなことをしなくても、俺はずっと姫華の側にいる

今までどおりだと言っても、姫華は納得しなかった。



俺が高校に入って学校が離れたことが、姫華を一層不安にさせていた。



不安定な姫華。



ずっと小さい時から一緒で、妹の様に大切だった。

それは誰にも代わりようが無い。


でも、姫華にはそれだけではダメだった。




―お願い、慧の彼女にして。慧が他の誰かと付き合うなんて考えられない

―何でもするから・・・・・




何もしなくていい、今まで通りでいい。




―嫌!キスして、もっとそれ以上の事も・・他の子に絶対しない様な事

―繋がりたい・・・繋がっていたい・・・・・




姫華は俺と同じ高校に入学してきた。

そして言った。




―死ぬから・・・・何もしてくれないなら・・・死ぬから


やめてくれ、頼むから。


―私だけの慧でいて。私が、慧だけのものであるように・・



だけどそれでも俺は、姫華の要求に応えられなかった。

大切で、誰にも代えられなくて・・・・・



そして姫華は手首を切った。

それは姫華の俺に対する執着の深さであり、決意表明なのだと思った。

病院で目を覚ました姫華は言った。



―次は本当に死ぬから・・・・・

姫華を救うことも守ることも、満足にしてやれない愚かで弱い自分。




どうすれば良かったのか、今でも分からない。

ただ、今の状態が間違っている事だけははっきりと分かっていた。



もがけば姫華を傷つける。

だから俺はもがくこともせず溺れているのだ。

それもまた、姫華を傷つけていると知りながら・・・