「え・・・・舞嶋さん・・・・・」

『せんせ?』

「どうしたの?こんなところに・・・あの、今開けるから」


そう言ってエントランスのオートロックを解錠する。が


『ううん、先生それより今すぐ出てきてよ』

「え?」

『ここで待ってるから』





エントランスに顔を出した咲を見て、姫華はにっこりと笑った。


「ごめんね、せんせ。突然」



ついて来て欲しいところがある。

そう言って姫華が待たせていたらしいタクシーに乗ってやってきたのは、今まで何度か綾野に食事に連れてきてもらったレストランも入っている六本木のミッドタウンだった。

しかし、地下の車寄せにタクシーを付けると、姫華は迷わずホテルのエレベーターに乗り込んだ。

既にチェックインされていた部屋は、咲が見た事も無いスイートルームだった。


「あの、どうしたの?舞嶋さん・・・こんな所で」

「ちょっと先生と話がしたくて。誰にも聞かれたくない話だから」

「・・・・白河くんのこと?」


姫華は窓に背を向けて立っている。

逆光で表情が見えずらい。

少し、笑ったように見えた。


「ていうか・・・・慧と、私の事」