「せんせ、酔っ払ってんの?」
慧がイスから立ち上がる。
「よ、酔っ払ってるよ!教師だってお酒くらい飲みます!」
頭がクラクラする。
(こんなの絶対変だ・・・・・・)
「せんせ・・・大丈夫・・・?」
慧が伸ばした手から逃れるように身体を引いたと思った瞬間足元がぐらついた。
(あ、立ってられない・・・・)
一瞬目の前が真っ暗になり、次に目を開けると
恐ろしく綺麗なカオが目の前にあった。
男性にしては白く滑らかな肌。
長めの前髪から見える瞳は、切れ長で少し垂れ気味だ。
真っ直ぐで細い鼻梁。
薄くも厚くも無い唇、やや大きめの口。
「先生、大丈夫?」
殆ど胸に抱きとめられるような形で、咲は慧に支えられていた。
「あ・・だい、じょう・・・ぶ」
上手く言葉が紡げない。
慧はなおも咲の顔を覗きこんでくる。
極至近距離で目が合ったまま、何も言えない。
ダメだ・・・・・
どっちからか分からない。
ただその時はそうするより他に選択肢なんて無いような気がした。
ふたりは言葉無く、ただキスをした。
唇が離れても、また求めてキスをした。
ため息。