咲の部屋。

それ程大きくないダイニングテーブルの上に咲はコーヒーを置いた。


「えっと、ミルクよね・・・・」


咲が冷蔵庫をあけようとすると


「いや、いい。このまんまで」

「え、そうなの?」


咲が振り返ると慧は既にブラックのままで口をつけている。






迷った。



23時になろうとする時刻。

こんな時間に、生徒を・・・・・それも男子生徒を自宅に上げるべきではない。

そんなことは分かっていた。



だけどあの目。

自分を見つめていたあの目は・・・・・

あのまま放り出してなんかおけない、そう感じた。



「一体どうして・・・・」

咲はあえて自分はテーブルに付かず、立って話し出した。


「電話したけど・・・・出ないから」

「え?電話?」


咲は近くにあったバッグからスマホを取り出す。

見知らぬ番号から2回、着信があった。


「この、6922て白河くん?」

「そう」


「あれ、なんで私の番号・・・」

「ごめん、こないだのアンケート用紙・・・忘れてそのまま持ってて」

「ああ、そっか。それで住所も・・・・」


「・・・先生あんな訳分かんないアンケートにバカ正直に書きすぎ」


「そ、そうなんだけど・・・・てか、そうじゃなくてどうしたの?なんで電話くれたの?」