タクシーの中。

「なんだかなー、いくら教師は副業NGって言ったってたまにごはん連れてくくらいじゃ全然ワリが合わないんだよなー」


「充分ですよ、こうして家まで送ってもらってますし」

「なーんか公私混同してるみたいで失礼かなって」

「そうですか?」

「だって、今日のメシもこのタクシー代も俺のポケットマネーよ?」

「・・・・・・・・・」


それはどういうことか、と咲が考えているうちに綾野が答えを言う。


「つまり今日のコレは経費じゃなくて、俺の個人的なデートにカウントしちゃってるって事」


「デート・・」

「そ」


それはつまりどういう事か・・・と更に咲が考えていると

車は見慣れた路地を右折した。


「あ、すみませんあの信号の手前で・・・」


咲はそれ以上突っ込んだ会話になる前に家に着いたことで

なぜかほっと胸を撫で下ろしていた。